ろっ骨は、整体業界の中であまり重要視されていないようです。
整体院を訪れるお客様は、肩や腰、首の不調を訴える人が多いですからね。
整体院のホームページやブログでも肩や腰、首関係の内容が多いのは止むを得ません。
ところが、ろっ骨を整えることで、なかなか整わない・ぶり返す身体の不調が整うことがあります。
主には肩や腰の不具合が、ろっ骨を整えることで落ち着いてくるものです。
整えるろっ骨は大きく分けてわき腹と胸骨、背骨の3か所です。
え?「背骨?背骨はろっ骨じゃないよ」そんな声が聞こえそうです。
失礼しました。説明が不十分ですね。
ろっ骨は背中、後ろに回って背骨とくっつきます。
ろっ骨が背骨とくっつく、その部分が整える箇所です。
ろっ骨は、バスケットボールのゴールのような構造です。
ろっ骨は上から、頭上から見ると左右に広がる楕円形。
そして、ろっ骨は後ろにある背骨にくっつき、身体にくっついています。
また、胸骨(きょうこつ)は、ろっ骨を前面でまとめる形になっています。
胸骨はのどの下にあるくぼみの下から、みぞおちまで続く細長い骨です。
このように、ろっ骨は前面に胸骨、後ろ面に背骨を支えにくっつく構造になっています。
両手の親指と人差し指の先を、胸の前でくっつけて見ましょう。
親指同士がくっついている部分が背骨、人差し指同士がくっついている部分が胸骨。
ろっ骨は、上記の指同士がくっついている部分以外の、指の部分になります。
ろっ骨がどこから負担をかけられていて、どのようにゆがんでいるのか?
また、ゆがんだろっ骨が身体のどこに負担をかけているか?
いずれにせよ、身体の流れを呼んで流れに従うことでしか、根本的な身体調整は実現しないでしょう。
経験上、わき腹は肩や鎖骨の近くにあるので、肩や首に影響を与えやすいです。
何度もぶり返す肩こりや肩を回すとゴリゴリ音が鳴る(肩胛骨のコリ)を整えるには、わき腹を整えることは有効です。
場合によっては、特定のろっ骨を整える必要もあります。
ろっ骨の部分的なゆがみが全身へ波及していることは、多くはありませんが珍しくもありません。
H様は、30代半ばの女性。
肩こりを訴えられて予約を取られました。
『右肩の奥にいつも鈍い痛みを感じています。右肩が左肩に比べて少し下がっている事と関係あるのでしょうか?』
整体予約メールフォームに書かれていた文章です。
H様のご職業はピアノ教師。
指や腕を酷使する職業です。
場合によってはイスとピアノの高さが身体にあっていなくて、腰からも負担が行っているかも。
そんなことを考えつつ、予想したことは実際の整体ではいったん棚に上げます。
予想はあくまでも予想で、実際とは異なります。
目の前にいるお客様の、身体の流れに従うのみです。
身体の流れを読むと、やはり両手の指や前腕、ひじが硬い。
特にひじ周辺にできたコリは分厚く、そして大きい。
ていねいに指を調べ、コリと対応点を探し出します。
指と前腕を対応させてゆるめ、ひじのコリをほどいて腕を整えます。
再度腕の流れを読むと、わき腹と鎖骨周辺が硬い。
両ひじと中指は、肩に負担をかけ悪さをしていました。
中指やひじをわき腹、鎖骨と対応させます。
両肩にも対応させると、ようやく上半身が落ち着いてきました。
肩やデコルテ周辺がふっくらしてきて、肩が床に近づいてきました。
H様もかなりリラックスして、小さく寝息を立てているようです。
「Hさん、大丈夫ですか?ここまでで肩の調子はどうですか?」
『はい・・・スミマセン、ああ、ずいぶん軽くなりました』
「それはよかったですね」
『でも、右肩の奥の痛みはまだ残っています』
改めて、身体の流れを読み直します。
右肩にふれるかふれないかの程度で指先をごく軽くふれ、目を閉じて指先の感覚に集中する。
・・・斜め下から負担をかけられているような・・・斜め下は背骨になります。
「Hさん、背中を打ったことありますか?」
『子どもの頃はともかく、大人になってからはありませんけど』
「いや、子どもの頃でも関係あるんですよ。いつごろですか?」
H様は小学生1年生の頃、学校の校舎の階段から落ちて、背中を強く打ったそうです。
「では、右肩を上にして横向きに寝てください」
背骨の上に指先を軽く当てて、下から慎重に流れを読みとります。
やっぱり、背骨上部にある骨が少し詰まっている様子です。
背骨に指先を乗せ、反対側の胸骨にも指先を乗せる。
しばらくそのままで、指先の反応を感じています。
氷が日光を浴びて溶けるように、ジワーっと背骨の詰まりがほどけてゆきます。
途中で、右の鎖骨から流れが出てきました。
こちらも胸骨と対応させて整えます。
「さて、これでどうですか?」
『・・・はい、大丈夫みたいです』
ゆっくりと起き上がったH様は、改めて肩をゆっくり前後に回して確かめます。
『うん、大丈夫、痛みはなくなりました。良かった・・・』
やれ一安心です。
『先生、私の右肩まだ下がっていますか?』
私は黙って、玄関に置いている姿見を持ってきてH様の前に置きました。
『左右ほとんどそろっていますね、たった1度の整体でここまで・・・ウソみたいです』
ろっ骨自体は寡黙な骨格です。
内臓はもちろん、肩や腰を黙って支える縁の下の力持ち。
ですが、ろっ骨のゆがみはバカにはできませんよ。
特に肩こりや腰痛のあなたには・・・。